Tatung 大同電鍋 TAC-11JM

本製品はIH方式ではなく、外鍋に水を入れて加熱し、発生した蒸気で内鍋を加熱する方式です。これは昔ながらの電気釜の方式であり、現代のIH方式に比べると火力や加熱効率、温度制御の精密さで劣ります。お米全体に均一に熱を伝えたり、お米の甘みを引き出すような細かい火力調整は期待できません。あくまでシンプルな加熱方法であり、炊飯性能を最重視する方には不向きな技術と言えます。現代の基準では最も基本的な加熱技術に分類されます。

内釜、外鍋ともにステンレス製を採用しており、衛生的で耐久性が高い点が特徴です。現代の炊飯器で主流の多層構造や特別なコーティング（フッ素加工など）は施されていません。そのため、熱伝導性や蓄熱性はお米を美味しく炊くことに特化した最新の内釜には及びません。また、フッ素加工がないため、ごはんが内釜にこびりつきやすい可能性があります。シンプルで丈夫なステンレス製は長持ちしますが、炊き上がりの品質向上やお手入れのしやすさに関しては最新技術に劣ります。

現代の炊飯器が持つような、白米（普通、無洗米）、玄米、雑穀米、炊き込みご飯、おかゆといった多種類の炊飯メニューや、ごはんの硬さや粘りを調整する食感炊き分け機能は搭載されていません。「炊く」という基本的な機能はありますが、お米の種類や好みに合わせた最適な炊き方を自動で行うことはできません。シンプルな操作性ゆえに機能が絞られており、多様なメニューやこだわりの食感を求める方には不向きです。

保温機能は搭載されていますが、現代の炊飯器にあるような「おいしさ保温」に特化した機能ではありません。ごはんの乾燥、変色、ニオイを抑制するような高度な制御は期待できません。単に温度を保つ基本的な機能として利用可能ですが、長時間の保温にはあまり向いていません。美味しさを維持するためには、炊きあがったら早めに食べきるか、保温時間を短くすることが推奨されます。高性能な保温機能を求める方には物足りない可能性があります。

本製品の価格帯は日本のミドルレンジIH炊飯器（約3万円）に近いです。しかし、機能面（炊飯方式、メニュー、食感調整、保温機能など）は現代のIH炊飯器に比べて大きく限定されています。その代わり、ステンレス製であること、炊飯以外の蒸す・煮る調理も可能な多機能電気鍋として使える点に価値があります。純粋な「高性能炊飯器」としてこの価格を見るとコストパフォーマンスは低いですが、「シンプルで丈夫な多機能電気鍋」として見れば、その価値は異なります。購入目的によって評価が変わる製品です。