Oculus Oculus Rift S

Oculus Rift Sは、外部センサーを必要としないインサイドアウトトラッキングシステム「Oculusインサイトトラッキング」を搭載しています。これは、ヘッドセット本体に内蔵されたカメラで周囲の環境とコントローラーの位置を認識する方式であり、外部に別途センサーを設置する必要がありません。そのため、最上位製品が提供するような、別売りの外部センサーを設置してより広い範囲や全身の動きを正確に追跡する「外部トラッキング機能」は搭載していません。しかし、インサイドアウトトラッキングでも十分な精度と範囲でVR体験が可能であり、手軽にVRを始めたいユーザーにはメリットとなります。

Oculus Rift Sには、VRゴーグルを装着したまま周囲の現実世界を確認できるパススルー機能が搭載されています。これにより、VR体験中にゴーグルを外すことなく、飲み物を取ったり、キーボードを操作したり、周囲の状況を一時的に確認したりすることが可能です。ただし、Rift Sのパススルー映像は白黒であり、解像度も最新のVRヘッドセットと比較すると低めです。そのため、現実世界を鮮明に確認するというよりは、あくまで補助的な機能として利用する形になります。VR体験を中断せずに現実世界と連携できる点は便利ですが、高精細なカラーパススルーを求める場合は、他のモデルを検討する必要があります。

Oculus Rift Sには、左右の瞳孔間距離（IPD）を物理的に調整する機能は搭載されていません。Rift SはソフトウェアによるIPD調整に対応していますが、レンズの位置を物理的に動かすことはできないため、ユーザーによっては最適な視覚体験が得られない場合があります。IPD調整機能は、VR映像のクリアさや目の疲れに大きく影響するため、特に瞳孔間距離が平均値から大きく外れるユーザーにとっては重要な機能です。物理的なIPD調整がないことで、一部のユーザーは映像の歪みや不快感を感じる可能性があります。

Oculus Rift SはPC接続型のVRヘッドセットであるため、リフレッシュレートは接続するPCのグラフィック設定やVRプラットフォームの設定によって制御されます。ヘッドセット本体に直接リフレッシュレートを調整するボタンやメニュー機能は搭載されていません。そのため、ユーザーがVR体験中に手軽にリフレッシュレートを変更することはできません。通常、Rift Sは80Hzで動作しますが、コンテンツやPCの性能によっては、より高いリフレッシュレートを求めるユーザーもいるかもしれません。HMD側での調整機能がないため、PC側の設定変更が必要となります。

Oculus Rift Sは、付属のOculus Touchコントローラーを使用してVR空間内のオブジェクトを操作します。最上位製品が提供するような、コントローラーを使わずに自分の手で直接VR空間を操作する「ハンドトラッキング機能」は搭載されていません。そのため、直感的な手の動きによる操作や、キーボード入力、ジェスチャー操作などは、Oculus Touchコントローラーを介して行う必要があります。ハンドトラッキングはより自然なVR体験を可能にする機能ですが、Rift Sではコントローラーによる精密な操作が中心となります。

Oculus Rift Sには、内蔵マイクが搭載されており、VR空間内で他のユーザーとボイスチャットを行うことが可能です。これにより、マルチプレイヤーゲームやソーシャルVRプラットフォームにおいて、他の参加者とリアルタイムでコミュニケーションを取ることができます。スタッフレビューで「HMDに音量調整ボタンが欲しかった」というコメントがあることから、マイク機能は標準で備わっていることが伺えます。VR体験を共有する際に、音声によるコミュニケーションは没入感を高め、より豊かなインタラクションを可能にします。